服部勇馬選手(トヨタ自動車)が、2時間07分27秒の好記録で、日本人としては14年ぶりに優勝しました。
一方、優勝候補にも上がっていた、前日本記録保持者の設楽悠太選手(ホンダ)は、残念ながら2時間10分25秒4位でした。
この両者、まったく練習方法が違います。
翌日の新聞によると、服部選手は、練習期40K走を2~3本だったのを、今回は8本取り入れており、結果、月間距離は700Kから1000Kに、従来の日本式の練習を充実させたもの。
設楽選手の練習は、距離走は30Kまでにして、目標とする大会の前に、10Kやハーフの大会を走り、調子を上げていくというもの。
さて、どちらの練習が良いのでしょうか?
私の個人的意見ですが、例えば服部選手の練習をそのまま設楽選手がやろうとすると、おそらく調子が上がらない。また、設楽選手の練習をそのまま服部選手が行っても然りです。
練習方法は、それぞれ個人にあったものを見つけ、実践していくのが良いという事です。
今までいろんな選手を見てきましたが、マラソン向きのの選手は「良く食べ良く飲む」「距離が踏める」「心身共にタフ」など共通の特徴があるように思います。さらに、そこそこの記録ホルダーは、5000m、10000mのスピードもあります。
自分の良い点をさらに鍛え上げ、弱点を補っていく考え方で良いと思いますが、注意点があります。月間距離にこだわりすぎてはいけません。
井上大仁選手(MHPS)は、練習期月間距離が1100~1200Kになるそうですが、さらにその距離を上回ろうとする意識は持つ必要はないと思います。走りすぎによる体調不良やケガのリスクが高まります。
さて、日本のマラソン界も東京オリンピックを控え、グランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズを設けました。この選考方法は二段階式で、まずは、MGCの出場権を得て、次に、選び抜かれた選手間でMGC大会本番で勝ち抜かなければならないというもの。これで選手は記録、安定性、勝負強さが求められるようになり、公平公正で、真に力のあるランナーが選ばれるように思います。
しかし、日本人が東京オリンピックで活躍できるかどうかに目を向けると、私には心配な点があります。
それは、「東京オリンピックではペースメーカーがいない」ということ。
MGCシリーズでは、すべての大会でペースメーカーがいます。ペースメーカーのいる大会は、記録が出やすいように、30Kまでは極端に体の負荷のかからないペース走の様に進みます。30K以降余力のあるランナーがペースアップして勝つか、残り2~3キロのスパート勝負のパターンがほとんどです。
つまり、ペースメーカーがいないという事は、どんなペースで進むかわからないということです。
東京オリンピックは夏場のレースなので、それほどのペースの上げ下げはないとは思いますが、それでも予想がつきません。
常に5000mを13分前後、10000mを27分前後で走る、アフリカ勢のスピードは脅威にほかなりません。